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バイパー 、ヴァイパー(英:Viper )は、クライスラーの一部門であるダッジおよびSRTから発売されていたアメリカンスポーツカー。 ニュルブルクリンク7分3秒058を記録する世界最速の量産市販車である。
バイパーはクライスラーから請われてフォード・モーターより移籍してきたボブ・ラッツ主導のもと、当時北米のマッスルカー市場で大きなシェアを得ていたゼネラルモーターズのシボレー・コルベットに対抗できるスーパースポーツとして企画された。
開発コンセプトは1960年代後半に登場したスポーツカー、シェルビー・コブラを意識したものといわれており、開発スタッフにはコブラを造ったキャロル・シェルビーも関わっていた。
1989年に北米国際オートショーにてコンセプトカーが発表され、1991年に1992年モデルイヤーとして市販モデルが登場した。
当初は3年間だけ少量限定生産する計画であったが、発売後大きな反響とともに想定以上の売り上げとなったため、予定を変更して継続販売されることとなった。
バイパーはアメリカ車ならではのOHVエンジンを搭載するが、その実はよく見られるV型8気筒ではなくV型10気筒、排気量は8リットルと市販車の中では最大級である。ベースとなったエンジンは元々ピックアップトラックの「ダッジ・ラム」に搭載されていたもので、当時クライスラーの子会社だったランボルギーニの手によってアルミニウム化され出力重視にチューンされた。また、ランボルギーニは足回りにも手をつけており、ブレーキもV型10気筒エンジンのハイパワーに対応すべくブレンボを選定している。2代目モデルのデザイナーは日本人である。
なお、バイパーは当初2010年末をもって生産を終了、後継モデルにはスタンスが引き継がれないとされていたが、クライスラーグループ・ダッジブランドのラルフ・ギレスCEOは、「バイパー後継車は計画通り開発が進んでおり、2012年夏には発表できるだろう。」と発言、V型10気筒エンジンを踏襲するモデルが予告された。そのモデルは、2012年にブランドをダッジからクライスラーのハイパフォーマンスカー開発部門である"SRT(Street and Racing Technology)"に移し、「SRT・バイパー」として発表された。しかしその後2014年にSRTブランドがダッジに統合され、わずか2年で再び「ダッジ・バイパー」の名が復活することとなった[1]。
ダッジ・バイパーは1989年クライスラーが発表したVM-01コンセプトカーが進化したものである。当時はV型10気筒ではなく、5.9リットルV型8気筒が搭載されていた。その後1990年4月、クライスラーは8リットルV型10気筒エンジンを搭載したコンセプトカー、VM-02を発表した。出力は300馬力=約304PS、トルクは450lb・ft=約62kg・mを発揮していた。
ダッジ・バイパー(初代) | |
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初代(GTS) | |
製造国 | アメリカ合衆国 |
販売期間 | 1991年–2002年 |
デザイン | トム・ゲイル |
乗車定員 | 2名 |
ボディタイプ |
2ドアクーペ 2ドアコンバーチブル |
エンジン | 7.9リットルV型10気筒OHV |
駆動方式 | FR |
最高出力 | 450PS/5,200rpm |
最大トルク | 67.7kg-m/3,700rpm |
変速機 | 6MT |
サスペンション | ダブルウィッシュボーン |
全長 | 4,490mm |
全幅 | 1,980mm |
全高 | 1,190mm |
ホイールベース | 2,440mm |
車両重量 | 1,590kg |
別名 | クライスラー・バイパー(日本) |
-自動車のスペック表- |
コンセプトカーの発表を経て1991年12月に販売開始された。当初は8リットルV型10気筒、400hp=約406PSのオープンモデルであるバイパーRT/10のみがラインナップされたが、後に450hp=約456PSのバイパーGTSというクーペモデルが追加された。また、市販モデルの意匠を受け継いだ「バイパーGTS-R」という名を与えられたレーシングカーがル・マン24時間やニュルブルクリンク24時間をはじめとするレースに次々に出場、優勝するなどポルシェ等の強豪を抑えた活躍を見せた。日本では1997年に「クライスラー・バイパー」(ただし、フロントのエンブレムはオリジナルの物を使用)として正規輸入が行われた。当初はRT/10のみが導入されたが、1999年からはGTSも追加された。当時のクライスラー車の中では1000万円を超す車種であった。なお、2002年12月に正規輸入車としての導入は中止され、2代目以降は正規販売されていない。
ダッジ・バイパー(2代目) | |
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2代目(SRT-10) | |
製造国 | アメリカ合衆国 |
販売期間 | 2002年-2010年 |
デザイン | 鹿戸治 |
乗車定員 | 2名 |
ボディタイプ |
2ドアクーペ 2ドアコンバーチブル |
エンジン | 8.4リットルV型10気筒OHV |
駆動方式 | FR |
最高出力 | 608PS/6,000rpm |
最大トルク | 77.5kg-m/5,600rpm |
変速機 | 6MT |
サスペンション | ダブルウィッシュボーン |
全長 | 4,460mm |
全幅 | 1,920mm |
全高 | 1,230mm |
ホイールベース | 2,510mm |
車両重量 | 1,530kg |
-自動車のスペック表- |
2002年にバイパーは2003年モデルイヤーとしてモデルチェンジが行われ、バイパーSRT/10という二代目が登場している。V型10気筒エンジンは8.3リットルまで排気量がアップされ、パワーも510hp=約517PSにまで高められている。こちらもオープンモデルとして登場したが、2006年にクーペが追加された。
2008年モデルでは、エンジンをマクラーレン・パフォーマンス・テクノロジーおよびリカルド社の協力を得て、ボアを1mm ほど拡大。これにより排気量を8.3リットルから8.4リットルへ拡大し、出力も600hp=約608PSへと高められた。無論この90PSもの向上は単なる排気量の拡大だけではなく、インテークマニホールドのポート形状をよりスムーズな形にモディファイしたり、より吸気効率の良いエアフィルタに変更するなど、細かい部分にも改良が施された結果である。
さらに、細かな部分ではオイルポンプをよりハイボリュームのものに変更したり、圧着力の高いクラッチの操作力を18%ほど軽減し、少ない踏力で扱えるように改善するなど、パフォーマンスの向上に合わせて全体的な見直しが図られている。また、搭載エンジンの改良に伴い、エクステリアも若干の変更が行われた。
エンジンフード上にエアアウトレットが追加された他、外装色のバリエーションも増加した。この結果、2008年モデルは、ベノムレッド、スネークスキン・グリーン、バイパー・バイオレット、バイパー・オレンジ、ブライト・ブルーの5色をベースに、オプションでホワイト、ブラック、シルバー、グラファイト、ブルー、レッドの6カラーのレーシングストライプを組み合わせることが可能になっている。
2007年にダッジブランドが日本に導入される際にバイパーの再投入が検討されたものの、マフラーレイアウトが日本の車検制度に適合していないために見送りとなった[注釈 1]。日本には並行輸入で数台が輸入されている。
また2008年モデルからはバイパーSRT-10・ACRというレーシーな仕様がオプションで選べるようになった。
ACRとは"American Club Racer"の略で、クライスラーのスポーツモデルに冠されるチューニングカーブランドである。従来のACRではベースモデルに対してパワー向上などのチューンが奢られるのが常であったが、元々バイパーSRT10は608PSもの大出力を誇っていたため、動力性能的なアップデートはほとんど行われなかった。
ACR専用パーツとして設定されたのは、エアロダイナミクスの向上を目的とした外装パーツ(フロントデュフューザー・カナード、GTウイング)、ノーマルよりもハードなレーシングサスペンション(KWのサスペンションを採用)、そして軽量化ホイールとなっている。
さらに追加オプションである「ハードコアパッケージ(HCP)」は、完全なサーキットユース向けとして設定され、走行に影響を与えないパーツ(オーディオシステム、トランクカーペット、リアキャビンサウンドインシュレーション、タイヤ補修キット、フードインシュレーター、スチールバッテリーカバー)を取り除き、純正比18kgもの軽量化を果たした。
またACRとは別に、レース専用車としてバイパー・コンペティションクーペが販売されている。
2010年2月10日にダッジより最終モデルとなる特別仕様車の生産告知が行われ、同日に予約が開始された[2]。
SRT・バイパー(2012-2014) ダッジ・バイパー(2014-2017) | |
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GTS-R | |
製造国 | アメリカ合衆国 |
販売期間 | 2012年-2017年 |
デザイン | スコット・クルーガー |
乗車定員 | 2名 |
ボディタイプ | 2ドアクーペ |
エンジン | 8.4リットルV型10気筒OHV |
駆動方式 | FR |
最高出力 | 640hp(約649PS)/6,150rpm |
最大トルク | 83kg-m/4,950rpm |
変速機 | 6MT |
全長 | 4,463mm |
全幅 | 1,940mm |
全高 | 1,190mm |
ホイールベース | 2,510mm |
車両重量 |
1,500kg(クーペ) 1,476kg(GTS) |
-自動車のスペック表- |
2012年4月、ニューヨークモーターショーで後継モデル「SRT・バイパー」と上級モデル「SRT・バイパー GTS」が正式発表された。前述の通りブランドは2012年から2014年の間はダッジからSRTに変更されていたが、メカニズムやコンセプトは従来型のそれを受け継いだ。
搭載されるV型10気筒エンジンの排気量は8.4リットルと先代から変更はないが、ピストン、インテークマニホールド、エギゾーストパイプなどに改良を施し、最高出力は640hp=約649PSまで向上、最大トルクは813N・m(83kgf・m)で、自然吸気エンジンとして世界最大であると発表された。
シャシのねじり剛性を50%向上させながら、ルーフ、ボンネット、リアゲートには炭素繊維を、ドアにはアルミニウムを使用。これにより先代より45kg軽量化された。
トランスミッションには従来同様6速MTを採用、電子制御システムはマルチステージ・スタビリティコントロール、トラクションコントロールシステム、4チャンネルABSが搭載される。
上級モデルのバイパー GTSはクーペよりさらに軽量な1,476kgに、加えてショックアブソーバーを組み込んだアクティブサスペンションが標準搭載される。
2017年、日本の道路交通法にあたるFMVSS226をクリアする事が出来ない為、生産終了(大きなスポイラーやサイドカーテンエアバッグが装備できない事等の理由) [3]
バイパー GTSをベースに開発されたレース仕様車で、アメリカン・ル・マン・シリーズ2012年シーズンに2台体制で参戦、8月のミッドオハイオ戦でデビューする。ドライバーはドミニク・ファーンバッハー、マーク・グーセン、クノ・ウィットマー、ライアン・ハンター=レイの4人。
2008年8月18日、ドイツ・ニュルブルクリンク北コース(1周20.8km)の走行テストにおいて、オランダ人レーシングドライバートム・コロネルが運転するバイパーSRT-10・ACRが7分22秒1というタイムをマークしニュルブルクリンク市販車最速の称号を得た。
当日、何か所かセミウェットの箇所はあるもののほぼドライ。最初の2周を7分42秒と7分35秒でラップ。そして3回目のスティントは7分24秒台。4回目のアタックで、この日のベストタイムを記録し、シボレー・コルベットC6 ZR-1が6月に記録した7分26秒4、日産・GT-Rが4月に達成した7分29秒3を大幅に短縮した。参考にパガーニ・ゾンダFは7分27秒8、ポルシェ・カレラGTは7分28秒を記録している。
コンピュータによるシミュレーションではACRは7分10秒台で走れることが検証できていた。その後、2009年8月13日にグンペルト・アポロに記録を塗り替えられるまで、バイパーは最速記録を保持し続けていた。さらに2010年モデルのバイパーSRT-10・ACRは過去の記録を10秒近く更新する7分12秒13を記録した。
2012年 バイパーACR-Xが7分3秒058を記録し世界最速の量産市販車となった。
よく言われているのが、コンパクトなボディーに巨大なエンジンを積んでいるという点である。ともにトラック用のエンジンをスポーティーなボディーに積んでおり、バイパーにいたっては約1トンのボディーに8.0リットルのエンジンを載せている。
そしてオープン→クーペという順でモデルをラインナップさせている点である。シェルビー・コブラはオープンカーという印象が強いが、後にレースマシンとしてクーペモデル(シェルビー・デイトナ)も製作している。また、デイトナとバイパーは、ともにリアのトランクの後端に跳ね上げをつけることで、空気の流れを上向きに変えてダウンフォースを得ている。
また、名前はコブラ・バイパーともに毒蛇の意味である。
初代より、バイパーはそのパフォーマンスの高さを生かしたチューニングベース車両としてサードパーティーにも人気が高い。著名なものとしてVenomシリーズと呼ばれる、アメリカのバイパーチューナーであるヘネシーモータースポーツ(Hennessey Motorsports )が製作したコンプリートカーがある。排気量を0.5リットル拡大させたバイパーヴェノム600、ヴェノム600Rというモデルに加え、排気量はGTSそのままに、ツインターボで馬力、トルクをアップさせたヴェノム800TTという初代バイパー最強モデルが存在する。
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