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この項目では、自動車の一カテゴリーについて説明しています。モータースポーツでのスポーツプロトタイプカーについては「プロトタイプレーシングカー」をご覧ください。 |
スポーツカー(sports car)とは、自動車の使用目的を条件としたカテゴリのひとつで、運転を楽しむこと(スポーツドライビング)を主な目的とし、高速走行時の操作性を含めた運動性能に重点を置いて設計・製造された自動車のことをいう場合が多い。
「スポーツカー」は自動車のカテゴリ中、最も古いものの一つである。1913年のイスパノ・スイザ3.5 L車は、世界で初めてスポーツカーと呼ばれた車[3]。同時期のスポーツカーとして、ブガッティT13やボクスホール・プリンスヘンリーがある[4]。
自動車競技の創成期には競技用車両の事を「sports car : スポーツカー」と呼ぶことがあったが、実際はレース専用車もスポーツカーも明確な区分分けが、まだなされていない状況にあった。この頃のレーシングモデルのほとんどは屋根がなく、またボディからタイヤが飛び出しているオープンホイールと呼ばれるデザインであったが、後にタイヤをボディと一体のフェンダーでカバーする形式が登場する。オープンホイールタイプのレースカテゴリは「グランプリ」をはじめとして既に確立されており、これらと区別する目的でオープンホイール以外の競技車両を「sports car : スポーツカー」と呼び始めた。
当初は、(特に長距離の)自動車競技そのものが公道で行われることが多く、各地に専用サーキットが建設されて以降も、競技用車両がサーキットまで一般公道を自走し、そのまま競技に参加することが普通に行われていたので、スポーツカーと競技車両の区別は必要なかった(できなかった)。その後、自動車の高性能・高速化により、自動車競技の高度化と一般車を対象とした保安基準の厳格化が進み、競技用車両と一般車の構造の乖離が大きくなって行った。しだいに競技用車両のほうは「racing car : レーシングカー」「race car : レース・カー」「racer : レーサー」などと呼んで区別するようになる。競技車両との差が明確になるにつれ、競技車両への応用を前提とした量産車をスポーツカーと称するように変化していったが、さらに時代が下がりレーシングカーの特殊化が進むにつれ、スポーツカーとレーシングカーの共通点は少なくなっていった。
※モータースポーツにおける「スポーツカー」については、「スポーツカーレース」、「プロトタイプレーシングカー」、「ツーリングカー」を参照。
現在の日本においては、運動性能を重視した車のうち、「スポーツカー」は公道で走ることを主な目的として設計されている車、「レーシングカー」はサーキットで行われる自動車競技で使われる車を指す。
なお、一般的な量産車の中にも「スペシャルティーカー」、「スポーティーカー」、「ホットモデル」という名称や概念がある。パワーウエイトレシオ、サスペンション、スタイリング、装備がスポーツカーに近いなど、スポーツカーが持つ特徴のいくつかを有している車で、スポーツ向けに仕様を振ってあるが、スポーツカーとまでは言えない車のことを指すが、両者の間に明確な区別はない。軽自動車のスポーツカーは集計、分類時にはスポーツカーでは無く軽自動車と分類される。[5]
1945年、第二次世界大戦が終結。だが、主要参戦国の日本では、空襲などの戦火により、工業地帯は壊滅的な被害を受け、スポーツカーどころか自動車の生産自体ができない状況であった。そのため、外国の自動車メーカーの支援や設計などの模倣をしつつ、会社や工場を再建。1960年代になると国産自動車メーカーは本格的なスポーツカーと言われるようなモデルにあたる三菱・ギャランGTO、トヨタ・スポーツ800、トヨタ・2000GT、ホンダ・S600、初代マツダ・コスモスポーツや日産・フェアレディZ S30型などが登場し始めた。
1970年代に入ると多くのメーカーでスポーツカーの開発・製造が盛んになり、1980年代には有名なモデルとしては日産・スカイライン、日産・シルビア、マツダ・RX-7、トヨタ・セリカ、三菱・スタリオン等々が製造・販売され、当時の若者が好んで購入する車となった。それらは1990年代前半までは人気車種の一つであった。
しかし、日本ではバブル景気崩壊後(1990年代)の景気の冷え込みや平成12年度排気ガス規制や京都議定書などを筆頭にした環境意識の変化により、トヨタ・スープラ、日産・スカイラインGT-R、マツダ・RX-7など趣味性重視の2ドアクーペスタイル[注 1]に属するモデルは販売不振に陥った。このうちトヨタはスポーツカー事業から一時撤退したが、他のメーカーはフルモデルチェンジや後継車種を販売しており[注 2]、スポーツカーの系譜の完全消滅こそしなかったものの、販売面では不人気車種の扱いとされ、スポーツカーにとって不遇の時代を迎えることとなる。
根本的な問題として、若者の車離れがあるが、それ以外の要因も影響している。販売するメーカー側は、売れない分野にあたるスポーツカーの開発は敬遠され、安定的に売れる軽自動車やコンパクトカーの開発に集中する傾向となった。また、購入する側はスポーツカーを嗜好的な存在としてとらえるようになり、メーカー側はその対策として、日常の実用性に秀でたスポーツセダンやホットハッチ系のスポーツカーのモデルチェンジや新規開発をしたものの、根本的にスポーツカー(スポーティーカーも含む)などの趣味性の高い車とミニバンや軽自動車などの実用性の高い車を比べた際、前者は運動性能やデザインを優先し、後者は積載能力・居住性・燃費などの利便性や経済性を優先しており、前者が工夫を凝らしても絶対的に後者を超えることは難しかったため、統計的に見れば、後者を買う傾向となりつつあった。
他にも2004年あたりから顕著になっている世界的な原油高によるガソリン価格の上昇により、安価で燃費の良い軽自動車やコンパクトカーの人気が上昇した。また主なターゲットである若年層の雇用不安定化(=収入の不安定化・貧困化、就職氷河期を参照)などが原因で発生した需要の冷え込みや景気が悪い時期にはスポーツカーなどは購入されにくくなる傾向も影響した。
そのうえ、事故率や盗難率の高さから任意保険料の料率が高額に設定されていることや整備面の負担が大きいこと、2003年に登場し推進されていくグリーン化税制の影響でスポーツカーの所有が税金面では不利になるなど、維持費の面からも敬遠されるようになった。
また、高度経済成長期の時代は日本人の経済力が年々増し、車の性能も年々向上する傾向であり、座席数や積載能力の小さいクーペを所有しても「どうせ近い将来買い替えるから、将来の自分の状況次第でまた判断すれば良い」などと考えたり、車に何らかの性能差があったことが多かったため、車の性能を目的として買い替えたりするなど、多くの人にとって車は「短期間(1~4年程度)で買い買えるもの」という扱いであったのでスポーツカーを保有してもあまり気にされなかった。
だが、バブル景気の崩壊後は、車を所有する人が減少した上、車の購入希望者の判断基準の上位に、子供が生まれたり増えたりしても、そのまま買い買えずに乗り続けられること(=後部座席があり、後部座席にも乗り込みやすいこと)や実用性(=生活の中で実際に使いやすい車で、買い物帰りに買ったものが積める(積載能力))ことや前述の理由から長期間の保有することが意識されるようになり、その結果として、クーペは避けられるようになり、統計的に見て、ミニバン・ハッチバック・トールワゴンなどを求める人の割合が非常に増えた。また、昔に比べ車の性能も大幅に向上したというケースは減少したため、経年劣化以外の理由で買い替える人が減少したことも影響した。それらのことから、スポーツカーの主流がクーペからスポーツセダンやホットハッチへと変わっていったのもその流れのひとつと考えられる。
2000年代前半にもスポーツカーに属する車は開発されていたものの、かつてのような売り上げに貢献する車種ではなくなっていた。だが、2000年代後半頃から各メーカーで若年層をターゲットとした低価格スポーツカー(スポーティーカー)の開発が進められるようになった。2007年東京モーターショーに出展された本田技研工業のスポーツ性能と環境性能を両立したハイブリッドスポーティーカー ホンダ・CR-Zや日産自動車出展のスポーツカー並みの性能とコンパクトカーのような広いキャビンを持つ「ラウンドボックス」のように各メーカーで未来のスポーツカー像が模索されている。2011年の東京モーターショーにはトヨタ自動車と富士重工業(スバル)の共同開発によるトヨタ・86、およびスバル・BRZがそれぞれ発表され、翌2012年春に共に販売開始された。2010年に前述のCR-Zを市販化した本田技研工業は、次世代NSXやS660を2015年に発売することを発表した[6](ただし、NSXは2017年に発売)。また2015年3月にスズキはアルトターボRSを発売、アルトワークス生産終了以降、途絶えていた軽ホットハッチを復活させた。
しかし、スポーツカーが肩身の狭い状況であることには変わりない。2000年代になってから新たなクーペ系スポーツカーの登場が少なかったこともあり、市場においてはクーペの激減とFF化の波を背景としてそれまでファミリーカーでしかなかったマークIIBros.やローレル、セフィーロと言った車種がその素性の良さと流通数の多さからチューニングカーのベースとなるケースが多発した。また上述の流れとクーペ市場の壊滅が重なり、日本においてスポーツセダンは相対的に「走り好き」のドライバーが選ぶクルマの主流となってきている。
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