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フォーミュラ3 (Formula 3、F3) は、自動車レースの1カテゴリーである。FIAが定義するフォーミュラカー(オープンホイール)四輪レースのうち、F2の下に位置するカテゴリーである。
かつてのF2やF3000、現在のGP2のカテゴリーの下に位置する国際フォーミュラレースで、現在いくつかの国、地域を舞台に選手権シリーズが開催されている。中でもイギリスF3(1951年〜)・全日本F3(1979年〜)・ヨーロッパF3(かつて1975年 - 1984年に開催されていたヨーロッパ選手権を復活させたシリーズ。ドイツとフランスの選手権が統合されて2003年 - 2012年に開催されていたユーロシリーズの興業基盤を引き継ぐ形で2012年から始まった)・ドイツF3(ユーロシリーズにドイツの選手権が統合された後、独自の選手権として2003年に復活)は、レベルの高い有力シリーズであり、最新のマシンとエンジンと技術が投入されているレースである。シャシについては自社製造品の使用も可能であるが、ダラーラが圧倒的なシェアを持っているので自社製などダラーラ製以外で参戦するチームが殆ど無いのが実状である。エンジンは参戦チームがそれぞれのエンジンチューナーからレンタルし、組み合わせて使用する。
レース形式は、「1イベント・3レース」のスタイルをイギリスが2010年から、ヨーロッパが2014年から行なっている。全日本は2011年よりイベントごとに「1イベント・2レース」と「1イベント・3レース」を併用するようになった。また距離は選手権によって違うが、最短で60〜80km前後、最長で90〜110km前後の走行距離となっている。イギリス選手権の場合は距離ではなくタイムレース(時間制限はレースごとに異なる)となっている。またイギリス、ヨーロッパ、全日本の選手権では旧型シャシー(一世代前)でのエントリーを別クラスで参戦させている。よって、新型と旧型の2世代のマシンの混走したレースとなっている。もちろん、選手権ポイントは別々に与えられている。
各選手権ごとにレギュレーションの細部が異なっているものの、シャシ・エンジン・タイヤ等の基本的な部分は同一であるため、それぞれのシリーズから参加者を募るレースが開催されることがF3の大きな特徴である。
などは各シリーズの上位ドライバーが参戦するためF3の世界一決定戦のような性格を持つ。
その他、1990年から1993年には、マカオGPの翌週に日本の富士スピードウェイでインターナショナルF3リーグが開催された。コリアスーパープリが2003年に開催を終了したのち、後継イベントとして2004年にバーレーンスーパープリ(バーレーン)が開催されたが、1回限りで終了した。
現在は各シリーズともイタリアのダラーラが製作したものが主流となっているが、ミゲール(en)やローラのシャシーを使用するユーザーも少数ながら存在する。
フランスのミゲールは2007年よりイギリス選手権で使用されている。イギリスのローラは、当初童夢と共同開発した車体を2003年からイギリス選手権などで使用されていたが、2005年以降独自に製作した車体となっている。2003年から全日本F3に自社製シャシーを使用し参戦していた童夢は、2006年にホンダとの参戦契約が終了したことに伴い、同年を最後にシャーシの開発を終了することを発表し、2007年からの全日本シリーズはダラーラのみが使用されている。
イギリスは1993年、全日本は1994年、ヨーロッパは前身のユーロシリーズより2003年以降全てダラーラがチャンピオンマシンとなっている。
参戦費用高騰を防止するために、新型発売の年からの3年間はモノコックを含めて車体の基本設計を変えるモデルチェンジ及び発売は禁止されているが、それ以外のパーツはアップデートキットとしての発売は認められている。
最低重量は550kgでF1より90kg軽いが、車幅 (1,800mm)、全高 (1,000mm) もF1の950mmとあまり変わらず、シャシの安全規格についてもF1と同等性能を持っている。
過去には他にマーチ、ラルト、レイナード、トムス(自社製作)、マルティニ、リジェ、シェブロンなどがシャーシを供給していた。
車体名 | 供給している選手権 | 現行車両発売年 |
---|---|---|
ダラーラ | イギリス・ヨーロッパ・全日本・スペイン・ドイツ | 2012年 |
ローラ | イギリス・ドイツ | 2008年 |
童夢 | 全日本(2006年まで) | 2006年 |
ミゲール | イギリス | 2007年 |
4気筒で排気量は2,000ccまでとなっている。2013年からはレース専用設計のエンジンの開発・使用が認められている[2]。
2012年までは市販車に搭載されていて、年間2,500台以上生産されホモロゲーションされたエンジンをベースにしなければならないとされていた。なおベースエンジンの排気量には規定は無く、2,000cc以下やそれ以上のエンジンを、レギュレーションに規定されている「2,000cc」へ変更することが許されている。また同メーカーエンジンの違うシリンダーヘッドとシリンダーブロックを組合わせて使用することも可能だった。
リストリクター(エンジンへの吸気量を制限する装置)を装着していること(2013年現在は、直径×幅:28mm×3mm[2])で、どのメーカー(チューナー)のエンジンでも最高回転数は6,500rpm前後。出力は2012年までの仕様で210PS程度(26mm×3mm、1996年までは24mm×3mmで170PS程度)、最高速度はギアレシオによっては270km/h前後まで出る。
ヨーロッパ、イギリスの両シリーズでは、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンが、全日本ではトヨタ-トムスが主流となっている。 ユーロシリーズ(ヨーロッパ選手権の前身)、イギリスシリーズでは、従来メルセデスが圧倒的な強さで、シリーズランキング上位を独占していたが、フォルクスワーゲンが2007年シーズン途中からユーロシリーズに再登場し、2008年からはメルセデスと同等の戦闘力を発揮した事でメルセデスの優位性が崩れ始め、フォルクスワーゲンへ変更するチームが出てきた。さらに、イギリスでも2008年から登場し2009年シーズンでは1991年の旧ドイツ選手権以来のチャンピオンエンジンとなった。 また、メルセデスとのエンジン競争が生まれた事で、既にワークス活動を終了してるオペルと無限エンジンではチャンピオン争いに参加する事が出来なくなり、ユーロシリーズからはオペルが、イギリスでは無限がインターナショナルクラスから姿を消した。 このため、本来トヨタ-トムスエンジンを使うべき立場にあるトヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム (TDP) からの参戦ドライバーや、自動車メーカー直系育成プログラムドライバーもチャンピオン争いを考慮し、ヨーロッパ選手権やイギリス選手権ではメルセデスやフォルクスワーゲンで参戦している。 2014年からは10年ぶりにルノーがヨーロッパ選手権に復帰した[3]。
オペルは2004年をもってワークス活動を終了しており、現在はチューナーの「スピース」からのカスタマー供給のみとなっている。過去に於いてはフォード、フィアット、日産等も供給されていた。
全日本では、トヨタ-トムスが20年ぶりに新型エンジン「1AZ-FE」を2007年シーズンから登場させ、それまで使用されていた「3S-GE」がナショナルクラスのワンメイク指定エンジンとなった。さらに2013年からは後述する直噴エンジン化に伴い、新エンジンの「TAZ31」が登場している。無限エンジンは、2007年でワークスによるエンジン開発が一旦終了し、全日本は戸田レーシング、イギリス選手権はニールブラウン・エンジニアリングによってチューニングが行われていたが、2013年よりワークス参戦が復活した。
2012年からは2,000cc NAは変更無いものの、2011年のWRCやWTCCで使用されるグローバルレースエンジン(GRE:1.6L ターボ)のシリンダーヘッドとシリンダーブロックをベースにした直噴エンジンに変更することが決定した[4]。その後FIAの作業部会(Single Seater Technical Working Group)による再検討の結果、新エンジン規定導入は2013年からとなり、さらにGREベース案も修正されF3専用の2,000cc自然吸気、直噴エンジン、リストリクター直径28mmとなった。ところが欧州のF3で主力となっているメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンの両メーカーが2013年の直噴エンジン投入を見送ることを発表したため、2013年は全日本F3でのみ直噴エンジンが使われた[5]。
エンジン名 | チューナー名 | 形式名 | 供給している選手権 | 備考 |
---|---|---|---|---|
戸田レーシング | 戸田レーシング | TR-F301 | 全日本 | 2013年規格[6] |
トヨタ-トムス | トムス | TAZ31 | 全日本 | 2013年規格 |
無限ホンダ | M-TEC | MF204D | 全日本 | 2013年規格 |
ニールブラウン・エンジアリング | ニールブラウン・エンジアリング | NBE4 | イギリス | 2013年規格 |
ルノー | ルノー | RST/OMC | ヨーロッパ | 2013年規格 |
フォルクスワーゲン | スピース | OXY | ヨーロッパ・全日本 | 2013年規格 |
メルセデス・ベンツ | HWA | F3-414 | ヨーロッパ・全日本 | 2013年規格 |
スリーボンド | 東名エンジン | TB14F3 | ヨーロッパ・全日本 | 2013年規格 |
無限ホンダ | ニールブラウン・エンジアリング | MF204C | イギリス(インターナショナルクラス、ナショナルクラス) ・オーストラリア |
|
トヨタ-トムス | トムス・ハナシマレーシング | 3S-GE | 全日本(ナショナルクラス・ワンメイク) | |
メルセデス・ベンツ | HWA | M271 | ヨーロッパ・イギリス・ドイツ・オーストラリア | |
フォルクスワーゲン | スピース | A41 | ヨーロッパ・イギリス・ドイツ | |
オペル | スピース | X18XE | ドイツ・オーストラリア |
2001年までは「5速・Hパターン」ミッションだったのが、2002年からはシーケンシャルミッションと呼ばれる前後の操作のみでギアチェンジができる6速のギアボックスが登場した。 2013年からは、ステアリング(ハンドル)から手を離さずギヤ操作のできる「パドルシフト」が採用される。
全ての選手権及びイベントにおいてレギュレーションでワンメイクとされ、晴用のスリックタイヤ及び雨用のレインタイヤもそれぞれ1種類と決められている。全ての選手権及びbpマスターズ、マカオGPでは使用できるタイヤの本数が晴用・雨用ともに制限されている。またタイヤウォーマーの使用は禁止されている。
タイヤ名 | 供給している選手権・イベント |
---|---|
クーパー | イギリス |
クムホ | オーストラリア・bpマスターズ |
ヨコハマ | 全日本・ドイツ・マカオGP |
ハンコック | ヨーロッパ |
ダンロップ | スペイン |
F1及びGP2で認められているセミオートマチックトランスミッション、カーボン製のディスクブレーキ、その他のハイテクシステム(アクティブサスペンション、トラクションコントロールシステム、アンチロックブレーキシステムなど)の搭載及び使用は禁止されている。
国際自動車連盟(FIA)では2019年から、F3の名を持つ新カテゴリーとして『FIA F3』を発足させる。
FIAでは「従来のGP3及びヨーロッパ・フォーミュラ3選手権(ヨーロピアンF3)を統合したシリーズ」としているが、マシン規定的には従来のGP3を引き継ぎ、ダラーラ製のワンメイクシャシーにメカクローム製の3.4L V型6気筒・自然吸気エンジンを搭載、タイヤもピレリのワンメイクとなっている。一方で従来との相違点としては、新たにドラッグリダクションシステム(DRS)の搭載が認められたほか、ドライバーの安全確保を目的として、フォーミュラ1(F1)で2018年より採用されている「Halo」がコックピットに装着される[7]。
ちなみにヨーロピアンF3は、2019年より名称を「フォーミュラ・ヨーロピアン・マスターズ」と改め、引き続き2018年以前のF3規定に従ったマシンによるレースとして開催されるため[8]、事実上は「GP3がFIA F3に、ヨーロピアンF3がマスターズに名称変更」した格好になっている。
FIAでは2020年より、全世界的にF3をワンメイク化した新カテゴリーに再編する方針を明らかにしているが、欧州外で唯一現行のF3レギュレーションに従ったシリーズを展開し、かつエンジンがマルチメイクである全日本F3の関係者からは反発も出ている[9]。また現在F3規定にて争われているマカオグランプリの取り扱いも問題になると見られている。
2015年まで、F3ユーロシリーズ・イギリス・ヨーロッパ・イタリア・スペイン・全日本のF3チャンピオンには、当該シリーズの最終戦から12ヶ月以内にドライバーからの申請があれば無条件でスーパーライセンスの発給が行われていた(発給には国際A級ライセンスが必要だが、F3チャンピオンであれば発給条件を満たしているのが普通)ため、F3がF1への登竜門として注目されていた。セカンドカテゴリである国際F3000・GP2チャンピオン経験者がF1チャンピオンになった例はルイス・ハミルトンだけであるのに対し、F3チャンピオン経験者がF1チャンピオンに輝いた例は多数存在する。
また、F3のチャンピオン(イギリス・ヨーロッパの場合)を獲った翌年に次の上級カテゴリー(F1, GP2, フォーミュラ・ニッポンなど)へステップアップするには、スポンサー(F1やGP2等のスポンサーの場合)からのサポートがある場合はほぼ間違いなくシートが用意されているが、スポンサーがない場合はシート獲得が極めて厳しい状況となっている。
氏名 | 選手権名 | F3チャンピオン獲得年 | F1チャンピオン獲得年 |
---|---|---|---|
ジャッキー・スチュワート | イギリス | 1964年 | 1969, 1971, 1973年 |
エマーソン・フィッティパルディ | イギリス | 1969年 | 1972, 1974年 |
ネルソン・ピケ | イギリス | 1978年 | 1981, 1983, 1987年 |
アラン・プロスト | フランス ・ヨーロッパ | 1978年(仏)、1979年(欧) | 1985, 1986, 1989, 1993年 |
アイルトン・セナ | イギリス | 1983年 | 1988, 1990, 1991年 |
ミカ・ハッキネン | イギリス | 1990年 | 1998, 1999年 |
ミハエル・シューマッハ | ドイツ | 1990年 | 1994, 1995, 2000 - 2004年 |
ルイス・ハミルトン | ユーロ | 2005年 | 2008, 2014, 2015, 2017, 2018年 |
日本では1979年より日本フォーミュラスリー協会が独自に開催し、1981年より日本自動車連盟 (JAF) 公認の全日本F3選手権となった。若手ドライバーの登竜門的存在であることもあり、開催当初はチャンピオンにヨーロッパ選手権へのスカラシップが与えられた。また多くのドライバーが、F3規格で開催されるマカオグランプリに参戦することになった。
1980年代後半のバブル景気の絶頂期になると、日本企業のスポンサーマネーを目的とした経験豊富な諸外国からの有力ドライバーが多数参戦し、参戦台数が30台を超える盛況となった一方、相対的に日本人ドライバーの力不足が目立つようになった。さらにその後、有力な日本人ドライバーが自動車メーカーのスカラシップを得てヨーロッパのF3に参戦するケースが増えたため、1990年代から2000年代にかけてはチャンピオンの多くが外国人となっていた。しかし2010年代に入ると、日本人ドライバーによるチャンピオン獲得が続いている。また近年はアジア諸国のドライバーの参戦も多い。
シャーシは、これまで外国製ではダラーラ、マーチ、ラルト、レイナード、マルティニ、ボウマン、ヴァン・ディーメンなどが参戦していたが、現在ではダラーラのみが使用されている。国産では、かつてはハヤシやトムスが参戦しており(トムスについては実際はイギリス法人のトムスGBが開発を担当していたため、国産に含めない場合もある)、童夢もローラと組み2003年から2006年にかけてシャーシを供給していた(2005年以降は単独供給)。
エンジンはトヨタ-トムス、無限ホンダ、スリーボンド(日産)、フォルクスワーゲンやHKS(三菱)、フィアット、オペルなどが参戦していた。特にトヨタ-トムスと無限ホンダは激しくチャンピオン争いをしたが、00年代半ばから無限ホンダはシェアを減らし、トヨタ-トムスの独壇場となった。また2014年の規約改定以降はそれまでチューナーであった戸田レーシングやスリーボンドが独自開発したエンジンを投入している。
タイヤは1987年まではダンロップとヨコハマも供給をしていたが、1988年から2008年までブリヂストン、2009年・2010年の2シーズンはハンコックタイヤ、そして2011年〜2019年はヨコハマのコントロールタイヤとなっている。
バブル景気崩壊以後参戦台数が減少し、参戦台数が15-20台程度と低迷する傾向が長期にわたって続いている。このため何度か旧型シャシーによる下級クラスを設ける試みが行われているが、あまり参加者数の増加にはつながっていない。この様な状況を打破すべく、1995年に旧型シャーシ(一世代前)を使用したBクラスが設けられたが、参加台数の減少により廃止された。2002年には再び旧型シャーシを使用したBクラスが復活したが、実際にはBクラスのエントリーはなかった。2005年にはBクラスを廃止する代わりに、旧型シャーシでのエントリーを認める規則改正がなされたが、実際には旧型シャーシによるエントリーはほとんどなかった。
さらに2008年には、これまで主力だった3S-GEエンジンを活用する目的で、エンジンを3S-GEのワンメイクとし旧型シャーシを使用した「ナショナルクラス」が創設された。開幕戦には7台のエントリーがあり、現在はステップアップした若手ドライバーと、ジェントルマンドライバーによるエントリーが中心である。
年間9ラウンドが日本全国のサーキットで開催されている。なお2001年より、若手ドライバーにより多くのレース経験を積ませることを目的に1大会2レース制が導入され、ヨーロッパの選手権に近い形となっている。
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