『トイ・ストーリー』(原題:Toy Story)は、ピクサー・アニメーション・スタジオによる、1995年に公開されたコンピュータアニメーション、ファンタジー映画である。
概要
ディズニー配給のアニメーション映画作品。1995年に公開された(日本では1996年公開)。劇場公開された長編映画作品としては、初のフルCGアニメーション作品。全世界で約3億6200万ドルの興行収入を上げた[1]。これは、当該年度の第1位である。日本での公開は1996年3月23日。日本でのセルビデオ出荷本数は190万本[2]。
制作はピクサー・アニメーション・スタジオ。監督ジョン・ラセター(ピクサー)。長編フルCGの作品を生み出した制作チーム統括の業績に対し、監督ラセターはアカデミー特別業績賞を受賞した。他にアカデミー賞候補として、脚本賞ノミネート(アンドリュー・スタントン)、オリジナル主題歌賞ノミネート("You've Got a Friend in Me")、作曲賞(コメディ部門)ノミネート(ランディ・ニューマン)。
1999年には、続編『トイ・ストーリー2』が公開された(日本では2000年公開)。2009年10月2日には、続編『トイ・ストーリー2』とともにデジタル3D版が2本立てで2週間限定で全米公開、日本では2010年2月6日に公開。
2010年6月18日にシリーズ第三作目『トイ・ストーリー3』が公開された。日本では2010年7月10日公開。
2008年に発表されたアメリカ映画ベスト100(10周年エディション)では99位にランクインした。
2011年にはアメリカのTotal Film誌で行われた「史上最高のアニメ映画50」にて第1位に選ばれた[3]。
2019年6月27日に第四作目「トイストーリー4」を全米公開予定。日本では同年7月12日公開予定。
ストーリー
カウボーイ人形のウッディは、古めかしいおしゃべり人形。背中の紐を引っぱると、パンチの効いた「カウボーイトーク」を聞かせてくれる。そんなウッディは少年・アンディの大のお気に入りで、彼は毎日のように、いろいろなおもちゃを取り混ぜながらカウボーイごっこに興じるのだった。そうしてアンディが楽しく遊ぶおもちゃ達には、とても大きな秘密があった。彼らは実は生きていて、話したり自由に行動したりできるのだ。しかし、それを人間に知られてはいけないというのが「おもちゃのルール」なのだ。ウッディは、アンディの一番のお気に入りのおもちゃで、おもちゃ達のリーダーでもあった。
そして、今年もアンディの誕生日がやってきた。おもちゃ達はこれから共に過ごすことになる新顔に興味津々。そこへ現れたのは、最新の宇宙ヒーロー、バズ・ライトイヤーだった。技術の粋を結集したようなバズに、アンディは案の定夢中になってしまう。また、バズ自身も自分が本物のスペースレンジャーだと信じて、飛行能力を証明するため高みから飛び降りたりするが、飛びはしなかったものの、派手な動きで恰好よく落ちたことから、これにはアンディのおもちゃ達までが心を奪われてしまう。
そんな中、デイビス家が引っ越すという新たな問題が持ち上がる。その騒ぎの最中、バズのことが面白くないウッディは、バズにちょっとしたイタズラを仕掛けるが、アクシデントが重なったことでバズはアンディの部屋の窓から転落するという大事故に見舞われてしまう。しかし、他のおもちゃ達は、ウッディが自分に取って代わりそうなバズを突き落としたのだと誤解しはじめる。一方ウッディは、アンディに連れられて「ピザ・プラネット」というレストランに連れて行かれる途中、二人を尾行してきていたバズに会って喧嘩となり、夢中になるうちガソリンスタンドでアンディとはぐれてしまう。必死に彼を追う二人だったが、道すがら「おもちゃ殺し」と称される隣家に住む悪童少年シドに発見され、そのまま連れ去られてしまう。
彼の部屋に閉じ込められたウッディとバズは、もうすぐ引っ越してしまうアンディの家へ戻ろうと試みる。しかし、テレビで流れていたバズ・ライトイヤーのCMを見たバズが自分がおもちゃであることに気づき落ち込み、さらにはシドがバズにロケット花火を括り付け爆発させようとする。ウッディはシドのおもちゃたちの協力を得て、バズを救出することに成功する。
だが、デイビス家が乗った車やアンディのおもちゃたちを乗せた引っ越しトラックが出発してしまう。ウッディとバズはトラックを追いかけるが、間に合わなかった。そんな中、ウッディがバズに括り付けられたロケット花火の存在を思い出す。2人は、ロケット花火を利用してアンディの元へ戻ることが出来た。
その後、アンディ達は引っ越し先でクリスマスを迎える。おもちゃ達は、新しいおもちゃがプレゼントされないか心配していたが、プレゼントの中身は子犬(バスター)だった。そして、冒険を共にしたウッディとバズは固い友情を誓ったのだった。
登場キャラクター
主要キャラクター
- ウッディ
- アンディのオモチャたちのリーダー的存在のカウボーイ人形。お調子者で明るい性格。一人称は「俺」。背中についたひもを引くと、内蔵されたレコードで「銃を捨てろ、手ぇあげな。」「やられたぜ!」などとランダムにしゃべる機能が付いている。アンディの一番のお気に入りだったが、バズがやってきてからはそのポジションが怪しくなっていく。バズを驚かそうとイタズラをするが、不幸な事故でバズが窓から落ちたため、仲間達から「オモチャ殺し」と疑われ、バズ本人とも当初は喧嘩が絶えなかった。しかし互いの本心を知って和解してからは二人で協力し、アンディのもとへと向かう。
- バズ・ライトイヤー
- アンディの誕生日にプレゼントとしてやってきた、体にいろいろな仕掛けがある流行のオモチャ。発売されたばかりだったためか、自分が子供向けの大量生産された玩具ではなく本物のスペースレンジャーだと信じており、空も飛べると考えていた(実際は飛んでいないが、本人は目を瞑っているため気づいていない)。一人称は「私」。しかし、シドの家に連れて行かれた際、テレビCMで自身の正体を知り、一時意気消沈するもウッディの説得と本心を知り、彼に協力する。アクションボタンを押した際に再生される"To infinity and beyond!"(日本語版では「無限の彼方へ さあ行くぞ!」)が決め台詞。
仲間たち
- レックス
- 恐竜のオモチャ。見た目とは裏腹に臆病で、自分より怖い恐竜が来るのではないかと思っている。一人称は「僕」。当初はスリンキーやボーと共にウッディを信用していたものの、誤解によって彼との信頼をしなくなるが後に、真実を知るとウッディに謝罪する。
- ミスター・ポテトヘッド
- 組み付けパーツ付のオモチャ。口が悪く皮肉屋。バズに嫉妬したウッディを最後まで見下したものの、最終的には真相を知り、描写はないが和解した。妻のミセスに会うのが夢でラストでそれが実現した。
- ハム
- ブタの貯金箱のオモチャ。ポテトヘッドと同様、ウッディを疑っていた。後に、真実を知ると描写はないがウッディと和解した。
- スリンキー・ドッグ
- 体がバネでできた犬のオモチャ。オモチャの中では最年長でウッディとは長い付き合い。ウッディが疑われた時も信用していたものの、誤解の連続で見放すも真相を知り、罪悪感を感じ、誰よりも彼らを助けようと奮闘する。
- ボー・ピープ
- 電気スタンドの人形。アンディのオモチャ達の中では紅一点。最後までウッディを信じており、ウッディとバズの活躍を見て誤解であった事実を伝えた。
- グリーン・アーミー・メン
- リーダーの軍曹率いる、小型の兵隊たちの集団。ウッディの命令には忠実だが、ウッディがバズを突き落とした時は「おもちゃの面汚し」と言い放った。
- RC
- バギーのラジコンカーのおもちゃ。ウッディに操作ミスで、誤ってバズを落とした。引っ越しの時に、ウッディとバズを乗せて、引っ越しトラックまで走った。
- ロッキー
- 力持ちのおもちゃ。その怪力でウッディを投げ飛ばしたが、事実を知るとウッディとバズを助けるために協力した。
- スケッチ
- スケッチボードのおもちゃ。ダイヤルを回すことで絵を描くことができる。早撃ちも得意。
- レニー
- 双眼鏡のおもちゃ。おもちゃたちが遠くを見るのに使う。終盤ではウッディとバズが追いかけるのを目撃し、それをみんなに報告したことでウッディの疑いが晴れる。
- つなぐでござる
- 繋げて遊ぶゲームのサル。バズを救出しようと出されたが、人数が足りなかった。サルの鳴き声しか発さない。
- 占いボール
- ビリヤードのように8と書かれた黒いボール。それを振ると「望み薄」などと書かれた運勢が出る。ウッディがそれを見て机の下に落としたが、これが事件の始まりとなってしまう(幸い下には誰もいなかった)。
- ほかにも笛付のサメのオモチャやブロック人形、キャタピラのロボットやスネーク、、ホッケーパックのオモチャなどがアンディのおもちゃとして登場している。
- エイリアン
- ピザ・プラネットのクレーンゲームの景品のエイリアンの人形。集団で行動しており、クレーンを神と呼ぶ。そのうち一体はシドのオモチャとなり、スカッドによって無残な姿にされたが、終盤でシドに復讐した。
- ミュータント・トイ
- シドによって改造され、奇妙な姿にされたオモチャたち。人面を持つ金属のカニ、人形の足を付けた釣り竿、人形の代わりに手のついたびっくり箱、後ろ足がタイヤのゼンマイガエル、アヒルのレスラーなど。全員不気味な外見とは裏腹に優しい性格で、終盤ではウッディに協力してシドに復讐した。
人間
- アンディ・デイビス
- ウッディたちの持ち主の少年。当初はバズばかり遊んでウッディに興味を示さなくなったが、引っ越しの際にはウッディとの興味を取り戻す。
- シド・フィリップス
- 本作のディズニー・ヴィランズ。よくオモチャを改造したり、破壊したりするのでアンディのオモチャ達から恐れられている。母親の前では良い子を演じている。
動物
- スカッド
- シドの飼い犬。獰猛な性格でよくシドが購入したオモチャを無残にする。終盤でウッディとバズを追いかけるが、車に囲まれて動けなくなってしまった。
- バスター
- アンディの飼い犬でママからのプレゼント。ラストのみの登場。
声の出演
日本語版制作
スペシャル・エディション
- 日本では次作が劇場公開した2000年3月に「メイキング・オブ『トイ・ストーリー』」を収録したスペシャル・エディション版VHSが発売された。
トリビア
『トイ・ストーリー』は、アメリカの中流家庭の子供部屋が主な舞台となっており、実際にアメリカで売られている、または売られていたおもちゃが多数登場する。ホットウィール、See'n say、バケット・ソルジャー、スリンキー、Mr.ポテトヘッド 、トロール、バレル・オブ・モンキー(つなぐでござる)、Majic8Ball、エッチ・ア・スケッチ、リトルタイクスなどがそれである。
『トイ・ストーリー』に登場した実在するおもちゃが映画公開後に爆発的に売れた事から、『トイ・ストーリー2』では更に多くの実在のおもちゃが登場し、中には「ツアーガイド・バービー」のように目立って自己アピールするキャラクターも多数登場する。元来バービーは『トイ・ストーリー』から登場する予定になっており、シドの家からウッディとバズを救出するためにバービーが大立ち回りを演じる脚本が用意されていたが、マテルの許可が出ずお蔵入りとなった[5]。
『トイ・ストーリー』上映に合わせて発売したおもちゃの大半を、当時無名だったカナダの玩具メーカーシンクウェイ が製造・販売していた。トイ・ストーリーのヒットによりシンクウェイは業績を著しく上げた。その後、マテルや、ハズブロなど大手玩具メーカーが相次いで参入し、莫大な利益を生んでいる。ディズニー関連商品を扱うディズニーストアでも定番商品として扱われている。
元々は、1988年に制作された短編『ティン・トイ』の主人公のおもちゃ「ティニー」が、仲間を探して旅をするという内容で、30分のクリスマスTV番組として企画されていた。しかしディズニー側が「30分番組が作れるなら映画も作れる」と説得、劇場用作品として制作される事となった。これには、当時ウォルト・ディズニー・ピクチャーズの会長だったジェフリー・カッツェンバーグが何度もラセターを引き抜こうとして失敗し、それならピクサーにディズニー映画を作らせようという思惑があったという経緯がある。
本作の着想のきっかけを作ったのはおもちゃコレクターの北原照久である[6] 。監督のジョン・ラセターが横浜の山手で北原が運営するブリキのおもちゃ博物館を訪問したことで本作の構想が生まれた、という証言がある[6]。
エンドロールにて、アニメ製作スタッフ内には「ケン・ウィラード」(1959年生 - 1995年没)の名が入っている。
ピクサーのCEOであるスティーブ・ジョブズの資産がなければ、制作は不可能に近かった。公開までの4年間の投資額は5000万ドルにも及び、「こんなに金がかかるなら投資しなかった」と語っている。しかし本作のヒットによりピクサーの株は高騰し、結果的にジョブスの資産は4億ドル増加する事となった。詳しくはスティーブ・ジョブスの項目とアップルを参照のこと。
ウッディがバズをおもちゃ扱いするシーンで「他にも呼び名があるが、この映画を見てる子供の前じゃ言えない」とメタ発言をしている。
『カーズ』及びメーターの東京レースにて、劇中のダイナコ石油が登場する。また、『カーズ』のラストシーンで『トイ・カー・ストーリー』として本作の玩具の車版が上映され、ウッディがフォード・ウッディーワゴンの模型、バズが玩具の宇宙自動車、ハムがトヨタ・セプターワゴン風のブタ貯金車となって登場した(ハムの日本語声優はカーズ本編のマックやモンスターズ・トラック・インクのイエティに従い立木文彦)。さらにジョー・ランフト追悼シーンではレニーが登場する。
シドに爆破される兵隊の人形“コンバット・カール”は元々はG.I.ジョーを使う予定だったが、「爆破するなら許可出来ない」とハスブロから拒否されたため、代替された。
又、同じくハスブロ製品であるMr.ポテトヘッドの使用許可がなかなか取れずに苦労したと後日ラセターが語っている。
『ファインディング・ニモ』の待合室にある賞状の上部中央にある丸い部分にはエイリアンが隠し画像として描かれている。
日本語吹き替え版でウッディを演じた唐沢寿明がよく「リアル・ウッディ」と言われている(ウッディと顔立ちが似ているため)。
バズ役の所ジョージが『カーズ』のイベントにゲストとして参加した際、ラセターから「バズ・ライトイヤーをやってくれてありがとう。これからもよろしく」と言われ、「『トイ・ストーリー3』があるんですか!?」と応じていた。なお、実際に『トイ・ストーリー3』は2010年7月10日より、日本でも公開された。初めはディズニー主体で作業が進められていたが、ピクサー買収により関係が修復したことで、ピクサーにより制作された。
本作のヒットを受けて、本作に出てきたピザ・プラネットのデリバリートラック(GYOZAバン)は、以降ピクサー作品のほぼ全てのどこかに登場している。
沖縄県宜野湾市には、2012年8月31日まで日本で唯一のトイ・ストーリーのグッズを扱う専門店バナナフレーバースがあった。
2006年-2007年に自動車レースSUPER GTのGT300クラスに於いてaprから「TOY STORY apr MR-S」という名称のマシンが参戦していた。カーナンバーは「トイ」の語呂合わせで101番。ドライバーは2006年が新田守男/高木真一、2007年は大嶋和也/石浦宏明で、2007年にチャンピオンになった。また2006年には2輪の鈴鹿8時間耐久ロードレースにもチームHARC-PROから「TOY STORY RT HARC-PRO」として小西良輝/安田毅史組が参戦し、総合2位の成績をおさめた。
アンディのママの車のナンバーにはピクサートリビアではお馴染みのA113が使われている。
バズ玩具のCMでの玩具屋は2作目のトイ・ストーリー2の悪役、アルが運営する「アルのトイバーン」である。
映画公開前、アメリカとカナダの小売業者からシンクウェイ社へのトーキングバズの総発注数は6万体だったが、映画の爆発的人気で商品が枯渇し、増産に増産を重ねて全世界で900万体以上も売れて、今も増え続けている。
2008年5月31日に打ち上げたスペースシャトルディスカバリーにバズ・ライトイヤーのおもちゃを載せて、ISS(国際宇宙ステーション)で長期間、無重力訓練などの様子が撮影された。これはNASAが子供達や学生達に宇宙に関心を持ってもらう為に企画された。
Linuxディストリビューションの一つ、Debianではコードネームに本作の登場人物名を付けている。
日本語吹き替えは当初、ウッディに山寺宏一、バズに玄田哲章という配役であった。吹き替え作業も全て終了し、宣伝ポスターや広告には既に山寺と玄田の名が掲載されていたが、公開寸前で配役が変更された[7]。なお、スピンオフ作品であるテレビアニメ『スペース・レンジャー バズ・ライトイヤー』および東京ディズニーランドのアトラクション『バズ・ライトイヤーのアストロブラスター』および各種パレードでは、稲葉実がバズの声を当てている。本編以外(予告編等)のウッディは辻谷耕史が声を当てている。また、玄田自体はアストロブラスターのザーグの声優を務めている。
アンディの部屋に貼られているポスターの内、バズがスペースレンジャーへの入隊を募る物が有る。これは、第1次世界大戦の時にアメリカで出回ったポスター、“I WANT YOU FOR U.S. ARMY”(ジェームズ・モンゴメリー・フラッグ画のアンクル・サム)のパロディである。
最後のシーンでアンディのママが運転していた車でモリーが聴いていた曲はライオン・キングの「ハクナ・マタタ」。
冒頭のおもちゃ達のミーティングのシーンで、ウッディの後ろの本棚に「The Adventures of André and Wally B.」「Red's Dream」「Tin Toy」「knick knack」と背表紙に書かれた本が置いてあるが、これらはいずれもピクサー(及びその前身)が本作以前に制作した短編作品のタイトルである。特に、本作の原点となった『ティン・トイ』は、背表紙に書かれた著者名が「LASSETER」(ジョン・ラセター)となっている。
テレビ放送
脚注
関連項目